フィリピン ミンドロ島 (19991.13〜1.18)

恐怖と緊張のマニラから脱出し、3時間ほどバスに揺られバタンガスのフェリーターミナルに到着した。ここからフェリーで対岸のミンドロ島にあるプエルトガレラというリゾート地に向かう。
例年ならすでに乾季に入っているが今年は雨季が長引きカラット晴れた日がない。船で航行中も雨雲が垂れ込めていたがプエルトガレラに到着するころから急に天気が回復し雨季明けを思わせるような夕焼けになった。
プエルトガレラは美しい入り江に囲まれた小さな港で、この近くには多くの美しいビーチがあり、マニラからも比較的近いこともあって観光客が多い。

美しい入り江に囲まれたプエルトガレラの港

ナグラロッジ前の静かな浜

ミンドロ島に上陸しホワイトビーチへ向かおうとしたが連日の雨でジプニーが走れないという。困っていると地元の人が近くにナグラビーチがありそこまでなら行くことができるという。
ペモに乗ってナグラビーチまで行きロッジで宿泊を申し込もうとしたらなんと日本人が出てきた。名倉さんという70歳ほどになる日本人が経営するロッジで、名倉さんは10年ほど前にフィリピンに単身移住し現地の女性と結婚しこの地でロッジを経営している。

ロッジの前には静かな浜が広がり夜になるとこの浜から近くの漁民が小船で漁に出かける。
日がかげると南国とは思えないような肌寒さだったが夕方には雨季の終わりを告げるような美しい虹があらわれた。
たまたまロッジには日本人の熟年グループが宿泊中だった。フィリピンの地で日本人の経営するロッジで偶然にも日本人同士が一緒になるとは不思議な縁である。本来ならここに来ることはおろか存在すら知らなかったのだから。

雨季の終わりを告げる美しい虹

浜で遊ぶ漁村の子供

ナグラロッジの前の海岸で子供が遊んでいた。日本のように遊び道具はないがここでは豊かな自然が遊び道具だ。
ホワイトビーチからの帰り学校の前を通りかかった。学校といっても日本の学校に比べると規模は小さく設備も貧弱だ。ちょうど下校時で数人の子供たちと一緒に帰ったがみなとても元気で明るく活き活きとしている。日本では学級崩壊やいじめ、凶悪犯罪と深刻な問題が起こっているがここではそういったこととは無縁な無邪気で天真爛漫な子供たちばかりだ。
子供たちとわかれてから一人の少年と一緒になった。さっき村でアイスクリームを売っていた子で、これからプエルトガレラまで2時間ちかく歩いてアイスクリームを仕入れに行くという。アイスボックスは失業中のお父さんが作ってくれたもので仕入れたアイスクリームを村へ帰って売って家計を助けている。 君は大きくなったら何になりたいのと聞いたら少し考えていたが、恥ずかしそうにビジネスマンになりたいといっていた。 農村に育った子供には都会で働くビジネスマンは憧れになるのだろうか。年を取った今、自分はこの少年とは逆の憧れを持ってこの地を旅している。

このあたりは平地はほとんどなく狭い斜面に野菜や果物などを栽培して生計を立てており、生活はとても豊かとはいえない。住まいも粗末で家財も生活必需品だけだ。ぜいたく品などはなかなか手にすることはできないだろう。でも、村の人たちは時間に縛られることもなくのんびりとした生活をしている。たとえ仕事がなくてもここでは贅沢を望まなければ自然の恵みだけで活きていくことができる。失業が大きな社会問題にもならないし、仕事がなくても不安になることもない。

農村の家

大理石の小石が美しいホワイトビーチ

ホワイトビーチを歩いていると美しい小石が見つかる。真っ白な石や緑色をした石、複雑な模様をした石など、美しい石が沢山落ちている。これらの石は海岸の近くにある大理石の山から海岸まで流され波によって丸くなった小石である。ホワイトビーチの名前もこの大理石の石が多いことからついたのだろうか。
かっては日本へも大量の大理石が輸出されていたそうだが、今はイタリア産の輸入が増え採掘は行われなくなった。
ホワイトビーチは数キロの長い砂浜が続きもっとも観光客の多いところで周りにはロッジがたくさんある。
バタンガスからジプニーを何度も乗り換えやっとタガイタイにたどり着いた。
タガイタイは火山の外輪山にある避暑地で、マニラから近いこともあって休日には多くの人でにぎわう。
ここは高原のため日中でも涼しく朝は冬服がいるほどの寒さだった。

タガイタイの夜明け

美しい火口湖

巨大な火口全体は大きな湖になっており大小の島が点在する。この中の島には船で渡る事もできる。湖岸一帯には水田が広がり斜面一帯は果樹の栽培が行われている。そのためこのあたりにはフルーツを売る店が多くバナナやマンゴ、パパイヤ、グアバなどのおなじみのフルーツが店にたくさん並べられている。
フィリピンの旅もそろそろ終わりだ。あさのバスでマニラに戻り翌日の飛行機で帰国する。今回の旅は緊張する場面も幾度か合ったが思いがけない出会いもあり又フィリピンの田舎ののんびりとした生活を少し知ることができ密度の濃い旅だった。このあとマニラに戻ってからもハプニングがあったがフィリピンは旅人に不思議な魅力を感じさせる国だ。

山と花のアルバム  
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