ブランカ山群トレッキング (2002/06/06〜2002/06/16)

長いアンデスのほぼ中央部に位置するブランカ山群をトレッキングで訪れる。ここにはアンデスを代表するすばらしい山が数多くあり、毎日これらの山を見ながら、時にはペルーの山村をとおり、また珍しい高山植物の数々を見ながら雄大な景色を堪能することができる。
また、トレッキング以外にもアンデス地方の生活や風俗、珍しい果物や食べ物など興味がつきない。

リマ市を抜けると突然乾燥した荒地になる。そんな乾燥した丘陵地帯には粗末な家がびっしりと立ち並んでいる。その家並みが消えると周囲は砂漠になり、その中をパンアメリカンハイウエーが北に向かってまっすぐ伸びる。
これから向かうブランカ山群のふもとの町ワラスはリマからおよそ400km北にある。

 

北に向かって一直線に伸びるパンアメリカンハイウエー

 

熱帯フルーツやチリモヤと並んでみかんが

途中からパンアメリカンハイウエーを離れアンデスの山に向きを変えると道は次第に山岳地帯へと入る。
途中休憩した村には道路脇に果物を売る店が数件並んでいた。このあたりは乾燥した傾斜地が多いため農業にはあまり適さないためフルーツ栽培が盛んだ。店にはバナナやパパイヤなどの熱帯フルーツやチリモヤやタパインという30センチほどのさやに入った南米にしかない珍しい果物が並んでいる。それらの果物に混じってみかんが並んでいた。味も形も日本のみかんと同じだ。これは日系人が栽培をはじめ、今ではペルーではごく普通の果物として店に並んでいる。
早朝リマを出発して6時間ほどで標高4000mのコノコーチャ峠に到着する。峠を越えるとやがて前方にアンデスの山並みが現れる。ここから見えるのはブランカ山群の南端でトレッキングで訪れるブランカ山群はここからさらに100kmほど北にある。

 

ブランカ山群

 

ブランカ山群のふもとの町ワラス

夕方やっとワラスの町に到着した。ワラスはブランカ山群のふもとに位置し、雄大なブランカ山群の山が町のどこからでも見られる。
ホテルは町のはずれの高台にあり、ブランカ山群の象徴とも言えるワスカランが真正面に見える。
町のメインストリートには多くの登山用品を扱う店やトレッキングや遺跡観光を扱う店が多く並び、ザックを背負った登山家の姿も多い。

ワラスの町を出るとブランカ山群を象徴する山ワスカランが巨大な山容を見せる。
ワスカランは世界遺産にも指定された山だけに、その姿は堂々とし周りの山を圧倒する存在感のある美しい山だ。

 

ブランカ山群の象徴ワスカランと、その奥にそびえるワンドイ

 

美しい草原のウルタ谷と氷雪のコントライエルパス

ワスカランとチェキアラフの間の切り立った絶壁の間を抜けると突然広い草原に出る。ここは氷河が作り出したウルタ谷だ。谷には紫色のルピナスの群落が続き、草原では放牧された馬がのんびりと草を食んでいる。
谷の両側はワスカランをはじめチョピカルキ、ウルタなど5000〜6000mの高峰が谷を囲むようにそびえる。車はこれからさらに標高4890mのウルタ峠に向かう。

ウルタ峠を超えるとこの先は遠くアマゾンに続く。ここから流れる水は南米大陸を横断しはるか大西洋に注ぐ。
それにしてもこの急で険しい峠を古代インカの人々は新天地を求めて自分の足で超えてきたことを思うと人の偉大さを感じる。


 

ウルタ峠を越えるとこの先はアマゾンに続く

 

チョピカルキ Chopicalqui (6354m)

峠からは氷雪に覆われたチョピカルキをはじめコントライエルパス、ウルタなどの山を見ながら高所順応をかねて徒歩で一時間ほど下る。周りは険しい岩肌が続き、植物はあまり見られないが下るにつれ次第に珍しい高山植物が現れる。
ウルタ峠で見られた花
Boton-boton
Werneria dactylophylla
名称不明 Anqush
Senecio canescens
名称不明 Qallu-qallu
Stangea erikae

リマ市内ではまったく見かけなかった民族衣装がここでは日常の服装として見られる。この光景を見るとインカの国ペルーに来たという実感が湧いてくる。しかし民族衣装を着るのは中年以上の人たちだけで、若い人たちはジーンズなどの現代的な服装をしている。やがてワラスからもリマと同じように民族衣装が消えていくのだろうか。

 

民族衣装を着た女性

 

買い物客でにぎわう青空市場

ワラス町外れには大きな青空市場があり、ここでは日常生活に必要なものは何でもそろう。市場を歩いていると現地の人たちの生活が身近に感じられる。野菜や果物を売る店が集まっているところは色彩にあふれていた。

最初のキャンプ地はウルタ谷の奥の湖のほとりの広々とした草原にある。初日は車での移動のため時間はたっぷりあるので午後はウルタ谷の奥までハイキングに出かけた。道はほとんど平坦で途中高山植物を見ながら一時間ほど歩くと樹林帯を抜ける。

 

ウルタ谷のキャンプ地

 

巨大なルピナスの群落

樹林帯を抜けると突然前方に人の背丈ほどの巨大なルピナスの群落が現れる。ペルーには3種類のルピナスがありおこのルピナスはもっとも大きなルピナスで標高4000m以上のところに育つ。

ヤンガヌコ谷で見られた花
Lleqllish qora
Werneria nubigena
Ortiga macho
Loasa grandiflora
名称不明
Potocshu,Paquia
Calceolaria sp.
Pupa
Tristerix longibracteatus

 

ワンドイ Huandoy(6395m)

早朝キャンプ地を出発し車でヤンガヌコ峠目指して出発した。ヤンガヌコの急斜面の道を急いで峠を目指して走るが空は見る見る明るくなりワスカランの山頂が赤く染まり始めた。やきもきしながらやっと峠に到着。峠からはワスカラン、チョピカルキ、チャクララフなど世界百名山に上げられる巣晴らし山が眼前に黄金色の輝き放っている。

ワスカランを背後から見ると同じワスカランとはとても思えないほど表情が変わる。ワラスがわから見たワスカランは純白の優雅な美しい山だが。背後は岩肌剥き出しの荒々しい姿になる。

 

ワスカラン Huascaran (6768m)

 

チョピカルキ Chopicalqui (6354m)

チョピカルキはヤンガヌコ谷の支配者のように堂々とした美しい姿を見せる。特異な形状の山が多い中にあってもっとも山らしい美しいスカイライイを見せてくれる。

小金色の山も見る見る色を失い再び氷雪に覆われた純白の姿に変わる。これだけの名山を目の前にするとなかなか去りがたいが、この先ではわれわれわれの到着をこれから同行するスタッフが待っている。

 

チャクララフ Chacraraju (6112m)

 

チョピカルキ Chopicalqui (6354m)

峠を越え反対側に入ってもなおチョピカルキの姿は続く。背後に回るとこれがあの優雅なチョピカルキかと思うほど荒々しい姿に変わる。
車はスタッフの待つバケリアに到着。ここからポータの馬に荷物を預けいよいよトレッキングが始まる。
標高3700mまで下るともうかなりあつくなる。一気に谷に下ると緑豊かなのどかな山村が点在し、以前ネパールの山村を歩いたときの光景がよみがえってくる。でも農家の庭先で見かける人の姿はインカだ。
こういう光景を見ていると古い日本ののどかな山村を思い出す。日本にも楽しく歩けるようなかっての自然豊かな山村の姿を残してほしい。(戻してほしい)

 

のどかなバケリア谷の山村

 

編物をする母子

村のあぜ道の陽だまりでは編物をしている母子の姿があった。ごくしぜんな形での親子のふれあいや親の働く姿を見ることで家族愛や親を尊敬する気持ちが育っていくのだろう。
豊かな日本では自己中心的で身勝手な人が増え、家族の絆は薄れて行くばかりだ。

ワリパンパ谷で見られた花
Shillcu, Quico
Bides andicola
名称不明
Patsamcash, Toru-toru
Halenia umbellata
名称不明
Rirkacock
Alonsoa linnearis
名称不明
Chinchi, Pinchur
Brachyotum rostratum
名称不明

 

ワリパンパ谷から見るブランカ山群の山

バリア谷を早朝に出発して今回のハイライト標高4750mのウニオン峠を目指す。2時間ほど緩やかな道を進むと急に視界は開け紺碧の空にアンデスの白い山がまぶしく輝く。
道は峠に近づくにつれ次第に勾配はきつくなる。見上げていたタウリラフの山頂もかなり近づいてきた。峠まではあと少しだが空気が薄く思うように足は動かない。何度も立ち止まり深呼吸をしながら少しづつ峠を目指して歩いていく。

 

ウニオン峠直下

 

タウリラフ Taulliraju (5830m)

キャンプを出発しておよそ5時間でやっと峠に到着した。峠を越えると景色は一変する。
黒々としたタウリラフは一面氷雪に覆われ白く輝き。尾根が谷を抱き抱えるように巨大な姿に変わる。

前方の谷の右側には鋭く天を突くようにキタラフがそびえる。この山の右にはアルパマヨが続くがその姿はここからは残念ながら見ることはできない。

 

キタラフ Quitaraju (6036m)

 

アルテソンラフ Artesonraju (6025m)

谷の左側にはキタラフの荒々しい姿とは対照的にやさしい表情のアルテソンラフがそびえる。
タウリラフの氷雪に覆われた斜面の下にはコバルト色に輝く美しい池がある。ブランカ山群で見る湖はどれも青い色をしている。これは山に含まれる鉱物が溶け出すためだ。
それにしてもまわりを氷雪に囲まれたこの池の色は神秘的なほどに美しい。

 

神秘的な輝きを見せる池

 

サンタクルス谷

峠からはこれから歩くサンタクルス谷がまっすぐに伸び、その先は青く輝く湖へと続く。
ウニオン峠付近で見られた花
名称不明 Qori Waqaq
Nototriche sp.
Rima rima
Krapfia weberbauerii
名称不明
Chersodoma ovopedata
Estrella rigida
(Valeriana rigida )
Milli milli
Bomarea dulcis
名称不明 名称不明 名称不明
Jacapa pishqun
Lycopodium crassum
Indian paintbrush
Castilleja sp.
Milli milli
Bomarea dulcis

Gentianella nitida
Macha-macha
Perenettya prostrata
ウニオン峠から珍しい高山植物を見ながらのんびりと下ってくると2時間ほどで今日のキャンプ地タウリパンパに到着する。キャンプからは真正面にタウリラフがそびえ、両脇にはキタラフとアルテソンラフがそびえる。
アンデスのトレッキングはネパールと違って荷物はすべて馬で運ぶためスタッフの数は少なくテントの設営はスタッフ全員で行う。食事は西洋スタイルで特に癖のあるものはなく比較的食べなれたものが多い。

 

タウリパンパのキャンプ

 

アルパマヨ Alpamayo (5947m)

早朝キャンプから30分ほど先のアルパマヨがよく見える場所へ行った。途中からもアルパマヨは見られるが全体を見られるのは登山道から離れた場所に行かなければならない。
ブランカ山群の山はどれも特徴的な形をした山が多いが、アルパマヨは均整の取れた美しい姿をしている。
タウリパンパのキャンプ地を少し下るとアルパマヨの姿が現れる。美しいアルパマヨを見ながら草原の緩やかな道を下るとやがて氷河が作り出した広々とした草原に出る。そこで日本人の若者3人グループに出会った。彼らはこれからアルパマヨへスノボーをしに行くという。

 

タウリパンパを出発する馬の隊列

タウリパンパで見られた花
Yawar taico, Quita clavel
Castilleja sp.
Potocshu,Paquia
Calceolaria sp.
Indian paintbrush
Castilleja sp.
Oqi maqa
Gentianella tristicha
名称不明
名称不明
Suntu, Ucushpachupan
Diplostephinum azurenum
Puroqsha, Purush
Passiflora trifoliata
名称不明
Curicasha, Cabeza
Matucana yanganucensis
名称不明
Jupey, Machuysa
Monnina salicifolia

 

氷河が作ったサンタクルスのU字谷

草原は先に行くにつれ次第に川の水量も増え池が点在するようになる。さらにこの先には大きな湖がある。
池を過ぎると谷は再び乾燥した狭い道に変わる。途中目にする草花も次第に種類が変わり標高が下がったことを感じる。

途中もう一泊して落石の多い狭い谷を抜けるとやっと最終地点のカシャパンパ村に到着する。ここから迎えの車に乗りワラスへ戻る。
途中モンテレーの温泉にたちった。温泉といっても日本のように情緒を楽しむところと違って、ここでは個室が並び中には湯船があるだけだ。コックをひねると鉄分を含んだ赤茶色の湯が勢いよくでてくる。

 

のどかなカシャパンパ村

ヤマコラルで見られた花
名称不明
名称不明
名称不明
Tawrincha
Lathyrus magellanicus
名称不明
Weklla, Machitu
Tillandsia walteri var. herrerae
名称不明
名称不明
Indiana
Onoseris annua
Mayu weta, Flor de mayo
Browallia multiflora
Shoqumpa
Salvia oppositiflora
Nawi pashta
Slamum hispidum
Hirose Kazuo  
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