日本を発ちベネズエラの首都カラカスへ(From Tokyo to Caracas)
成田からシカゴを経由してマイアミで一泊、米国でクリスマスを迎えることになった。といってもほとんど空港内と深夜、早朝のマイアミ市内だけでほとんどクリスマスの雰囲気はなかった。翌朝ベネズエラの首都カラカスへ向けてマイアミを離れた。

Miami

Miami

カリブ海上に点在する小島
Small Islands on the Caribbean Sea


さんご礁
Coral reef
離陸するとすぐ窓からはカリブ海に浮かぶさんご礁の小島が点々と続き、まるで宝石のような美しい景色が続く。しばらくすると海面にはまるでオーロラを見るような美しいさんご礁の模様が現れた。
サントドミンゴ上空を越えしばらくすると前方に南米大陸が現れる。海岸線はアンデスの延長線上にあり山地が多く、カラカスの空港は海岸線に張り出すような場所にある。



カラカス空港
Caracas Airport


 
カラカス市内からギアナ高地への玄関口シウダーボリーバルへ (From Caracas to Ciudad Bolivar)

ランチョ (貧困者居住区)
The shanty town in the Caracas suburbs
カラカス市街地へは空港からしばらく山間地を走る。山の斜面には粗末な家が立ち並び、ベネズエラは貧しい国のように見えるが実は産油国で南米では豊かな国だ。しかし近年政治の混乱が続き急速に経済は悪化し、失業者も急増している。
ベネズエラの面積は日本の約2.5倍、人口は約2,300万人。そのうち380万人がカラカスに住む。ベネズエラは長くスペインの植民地で、人種は約7割がメスティーソと呼ばれる混血で、白人が2割、黒人が1割、インディオが0.2割という構成だ。

カラカス市展望
A view of Caracas
カラカスは狭い谷に開けた町で、低いところは近代的なビルや官庁などがぎっしりとたち並び、山の手にはかなり高級な住宅地が広がる。アルゼンチンやチリなどではスペイン統治時代に立てられたヨーロッパ風の建物が多いが、ベネズエラは植民地時代はこれといった産業もなく大きな都市は発達しなかったのと、地震で古い建物が崩壊していまい古い建物はほとんど残っていない。

カラカス市展望
A view of Caracas
カラカス市内観光を終え夕方の飛行機でシウダーボリーバルへ移動する。シウダーボリーバルはカラカスの南西約400kmにある大きな町で、ロライマ山やエンゼルフォール観光のゲートウエーでもある。
 
シウダーボリーバルからギアナ高地を越えサンタエレナへ (From Ciudad Bolivar to Santa Elena)
シウダーボリーバルからはセスナに乗りロライマ登山口に当たるサンタエレナへ向かう。飛行場を飛び立つと眼下には広大な平原が延々と続く。ベネズエラは西部はアンデスの延長上にあり山地が多いが、国土の大部分はグランサバナと呼ばれる広大は平原が占める。



シウダーボリーバルを出発
leaves Ciudad Bolivar.


グランサバナ
Gran Sabana

グリ・ダム人造湖

カロニ川
Caroni River
巨大な人造湖を越えるとギアナ高地最大の川、カロニ川が現れる。カロニ川はシウダーボリーバルの先でベネズエラ全土を潤すオリノコ川に合流し、隣国のガイアナから大西洋に注ぐ。
カロニ川を過ぎると次第に森が増え、やがてうっそうとしたジャングル地帯となる。しばらくジャングル地帯の上を飛ぶと前方にテプイ(テーブルマウンテン)が見えてくる。いよいよギアナ高地だ。
テプイはギアナ高地に点在し、頂上部は平らで地上部とは1000mほどの絶壁により分断されている。そのため、テプイの上では生物は独自の進化を遂げ、この地でなければ見られない珍しい動植物が多く見られる。


うっそうとした熱帯雨林
Rain Forests


アウヤンテプイ?
Auyan Tepui ?


サンタ・エレナ到着
land at Santa Elena Airport
テプイの間を縫ってセスナはなおも飛び続けると再び草原が現れ、前方に赤茶色の滑走路が見えてきた。やっと約2時間の飛行が終わりサンタエレナ到着だ。サンタエレナの飛行場はまったくのローカル空港で、滑走路も赤土のまま。設備といっても小さな待合所があるだけだ。しかし交通網のないギアナ高地一帯にすむ人にとっては重要な足になる。
今回は参加者が多くセスナ4機に分乗してサンタエレナに飛んだが、最後の一機がいつまで待っても到着しない。何か事故でもあったのだろうかと次第に不安が高まってくる。現地のガイドが約束の時間に迎えに来たが最後の一機はいつまで待っても到着しない。2時間近く遅れてやっと最後のセスナが飛んできた。途中雨で近くの村に不時着して天候の回復を待っていたとのこと。


サンタ・エレナ空港
Santa Elena Airport


空港ターミナル
Airport Terminal


サンタ・エレナの中心部
Santa Elena


前方にテプイが見えてきた
Tapui comes into view ahead


ユルアニロッジに到着
Arrive at Yuriuani lodge
全員そろったところで現地ガイドの案内でサンタエレナの村はずれのロッジに向かった。日本を発ってここまで来るのにすでに三日を要した。いよいよ明日からトレッキングが始まる。
 
サンタエレナを出発しいよいよトレッキング開始点のパライテプイへ (From Santa Elena To Parai Tepuy)

早朝迎えの車に分乗してトレッキング開始地点のパライテプイへ向かう。
幹線道路を離れるとあたりは広大な草原になり、赤茶色の道だけが一本まっすぐ伸びている。

途中車が止まったので外に出て草原の中へ入って見た。一面に生えている植物はこの地帯特有の植物ばかりだ。土は鉄分を多く含んでおり鉄鉱石がいたるところにある。
道は次第に悪路になり車は激しく揺れる。急斜面を一気に上るとパライテプイに到着する。
村人は混血していないようで日本人に似た顔つきの人も多い。みな珍しそうにわれわれを見ているが近寄ってこようとはしない。子供にカメラを向けるとみな逃げ去ってしまう。
 
村からははるか前方にこれから目指すテーブル状のロライマ山がくっきりと見える。ロライマ山の隣にはクケナンテプイをはじめとするテーブルマウンテンが連なっている。
ギアナ高地を知ったのはいつのことだろうか。地球上の最後の秘境とか緑の魔境とかいわれ、人里はなれたジャングルの奥地にひっそりとたたずんでいると勝手に想像していたが、今現実に見る光景は広大な大草原のかなたにテーブルマウンテンが並んでいる。
ギアナ高地はおよそ20億年前、もともとはアフリカ大陸にあった湖底が南米に移動後隆起し、長い間の侵食により固い部分だけが残り、現在のようなテーブル状の山が形成されたといわれている。山の周囲は1000mほどの絶壁に囲われているため下界との交流がなく、山頂では生物は独自の進化をしている。そのため珍しい動植物が多く、およそ7000種あるといわれる植物の75パーセントは固有種といわれる。山頂部には土はなく、極端に栄養分が少ないので植物の生育には厳しい環境だ。そのため、食虫植物やパイナップル科、ラン科などの植物が多く、木はごくわずかしか見られない。


ユルアニ・テプイ
Yuruani Tepui (2400m)


クケナン・テプイ
Kukenam Tepui(2580m)


ロライマ山
Mt. Roraima (2810m)
 
はるかかなたのロライマ山を目指してパライテプイを出発 (We started from Parai Tepuy toward Mount Roraima.)
ここからロライマ山まではおよそ24km、2日かけて山頂を目指す。村を出るとあたり一面緩やかな起伏の草原がどこまでも続き、暑さと湿気との戦いが始まる。
草原は栄養分が少ない赤土のため植物の種類はごく限られているが、よく見ると所々に小さな花が見られる。流れのあるところには森があり、中に入るとまるでジャングルのようだ。このジャングルの中には獣も生息し、インディオはこの森に火を放ち狩をする。そのため草原のあちこちに焼けたあとがある。
 
昼過ぎやっとテック川の手前にあるキャンプ地に到着。ここで昼食をとる。昼食の準備をしていると突然雨が降りだした。ロライマの年間降水量は3000mmを超え、今は乾季の始まりだが毎日午後には雨が降るという。

ここで昼食
Lunch place
昼食を終えるとすぐテック川の渡渉をしなければならない。川幅は10mくらいで水深は30〜40cmと比較的浅いので靴を脱いで靴下を履いたままわたる。


テック川の渡渉
Tek River


クケナン川
Kukenan River
川を渡り終えると雨は本降りとなり道は雨水で滑りやすくなる。程なくするとクケナン川が現れる。クケナン川は先ほどのテック川より水深があり流れも急だ。ポータや足の長い外人は急流の中をわたっていくが、足の短い日本人にはちょっと危険だ。


クケナン川はボートで
get across Kukena River
by a boat
そこでボートが登場。ボートに二人づつ乗って川を渡ることになった。しかし船頭を含め3人乗ると今にも沈みそうになり、この急流を無事対岸までたどり着くことができるか不安だ。
 
無事対岸に到着すると雨もすっかり上がり再び強い日差しが照りつける。出発したときにははるか彼方に見えていたクケナンテプイやロライマも今はまじかに見える。今日の予定はベースキャンプまでだが、ベースキャンプまではかなりのスピードでなければたどりつけそうにない。足の遅い日本人にはベースキャンプまで一日で歩くのは無理だ。仕方なくベースキャンプのひとつ手前でキャンプし、明日早く出発して山頂のキャンプ地まで行くことになった。

クケナン・テプイ
Kukenan Tepui (2600m)


落差610m世界4位のクケナン滝
The Kukenan waterfall has 610m

ロライマ山
Mt. Roraima (2810m)
 
2日目の朝は雲が多いものの晴れだ。このまま山頂までもってくれるといいが。キャンプを出発し3時間ほど緩やかなのぼりの草原を歩くとベースキャンプに到着する。ベースキャンプの脇には川が流れているのでここで水を補給しいよいよロライマへの登山が始まる。

初日のキャンプ
The camp of the first day

朝日に輝くククケナンテプイ
Kukenan Tepui


ベースキャンプは間近
Base camp is near
 

パライテプイからベースキャンプで見られた花 (クリックで拡大)
The flowers seen from Parai Tepuy to the base camp

 
ベースキャンプを出発し、いよいよロライマ山頂を目指して登山が始まる (We started the base camp toward the top of Mount Roraima. )

ベースキャンプ出発するとすぐに滑りやすい粘土質の急斜面になる。日本なら鎖やロープが張ってあるが、ここではそんなものは何もない。雨が降ったらここを下るのはちょっと怖い。
急斜面を登りきると次第に木が多くなりジャングルになる。うっそうとしたジャングルの中ではあまり花は見られないが日当たりのよいところに出ると花も多
く、アナナスなども見られるようになる。

最後の水場で昼食をとるころには激しい雨にななり、ビニールシートのテントの下で立ったままの昼食になってしまった。
日本ではゴアテックスなどの雨具が一般的だが、ここではビニールのカッパやポンチョ、中にはずぶ濡れで歩いている人も多い。金持ち日本人は上から下まで高価な登山用品で身を固め、日本人の集団だけが何かこの大自然の中では違和感を感じてしまう。
相変わらず降り続く雨の中を次第に高度を上げていくと、これまでのジャングルも次第に小潅木に変わりロライマの切り立った絶壁が現れる。絶壁直下から見上げると、いったいどれくらいの高さかわからないほど垂直に切り立った崖だ。それにしても山の周りがすべてこのような垂直の壁になるのはどうしてだろうか。雨で浸食されるのなら三角形の山になるだろうから崩壊によるのだろうか。崩壊にしても周囲すべてが同じように垂直に崩壊するのも不思議だ。
ジャングルを抜けると高山植物の種類も多くなり次々に現れる珍しい花々の撮影で忙しくなる。
登山道の途中には大きな滝があり、その直下を通過しなければならない。滝の落差は数百メートルあり水量もかなりある。しかも下は滝の水に打たれて崩れやすく、水に混じって石も落ちてくるという。無事に通過できるか不安だ。
滝に近づくと大量の水が頭上から降り注ぐ。できるだけ山側によろうとすると水の勢いは強く谷側によれば転落の危険性が増す。滝の直下に来ると水の勢いはすさまじく、猛烈な台風並みの勢いで頭上からたたきつけられ、まったく視界は利かず立ち往生してしまう。
滝を通過してほっとすると今度は岩場の急なのぼりになるが、岩のところどころにはランやアナナスなどの珍しい花が見られるようになる。どれもこれまでに見たことの無い珍しい植物ばかりだ。

ロライマ山登山道で見られた花 (クリックで拡大)
The flowers seen on the mountain pass to Mount Roraima

山と花のアルバム  
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