中国・雲南省北部の高山植物

2008/06/25~07/01
 中国の南部に位置する雲南省は四川省と並んで高山植物の豊富なところで、中国にあるといわれるおよそ35000種の植物の約半数16000種ほどがこの雲南省にあるといわれる。しかし、これまで雲南省の花は四川省ほど観光開発が進んでいなかったこともあり紹介されることは少なかったが、四川省が地震のためしばらく花を見ることができなくなったこともあり今後雲南省の花への関心が高まるものと見られる。
 今回の旅では雲南省の北部、麗江、シャングリラ、最北の徳欽周辺の標高3000メートルから4300メートルぐらいの範囲を6日間かけて車で移動しながら観察した。この間に見られた高山植物は細かく数えると200種前後、鑑賞の対象になるような花はその半分程度で、四川省に比べるとまだ花のポイントの開発が遅れていることや時期の違いもありやや少ないが、訪れたのは北部の数か所のみであり今後が楽しみな所だ。
   
6/25 麗江近郊のもう牛坪と甘海子
 今日から中国雲南省の旅が始まる。昆明のホテルを早朝に出発し国内線で世界遺産の街麗江へ向かう。麗江に到着するとまず最初に玉龍雪山をまじかに望むことができるという標高3500mにあるもう牛坪へ行きそこで玉龍雪山と高山植物を見る予定だった。しかしあいにくの小雨と濃霧で視界は全く効かず途中のリフトは霧の中だった。
 もう牛坪に到着すると足がふらつき階段を上がるのがつらい。いきなり標高の高い所に来たため酸素不足で軽い高山病の症状がでたようだ。。リフトを降りると遊歩道があり一帯にはたくさんの高山植物が咲いている。ショウガ科の花、キンポウゲ、ランなどの花がたくさん咲いている。しかしこの天気の中ではのんびり花見とはいかず30分ほどで下山することになった。もう牛坪から麗江に戻る途中で白水台とい九賽講のミニ版のようなところでバスを降りた。この道路わきをにもワスレナグサやマメ科、シオガマ、シソ科、フクジュソウの仲間などが見られた。
 白水台の見学を終え麗江の手前の甘海子というところでフラーワーウオッチングをした。ここは広い草原と灌木林があり、ショウガ科の花やラン、サクラソウ、スミレやインカルビレアなど多くの花が一面に咲いている。もう少しじっくりと見たかったが次の予定があり早々に切り上げた。
 麗江に戻り夜はライトアップされた世界遺産の旧市街の見物に出かけた。建物はすべてオレンジ色の光でライトアップされ観光客でごった返しておりまるで祭りのようだ。麗江は古い建築様式を残した町が世界遺産に登録されているが、夜の街はあまりにも華やかでまるで観光施設の中にでもいるようだ。
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ゴンドラでもう牛坪へ行く もう牛坪一帯の高山植物
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白水台(上流) 白水台(下流)
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夜の麗江 夜の麗江
   
6/25に見られた花
6/26 シャングリラ周辺
 今日も天気は今にも降り出しそうな曇り空。朝ホテルを出て麗江の旧市街の散策に向かう。早朝の旧市街はあまりにも観光地化され本来の古い街並みとそこでの生活が全く感じられない夜の姿とは打って変わって静かな落ちつた町だ。
 麗江を後に車で雲南省の北部にあるシャングリラへ向け出発。途中虎跳峡という激流の渓谷へ寄った。ここは川沿いに2キロほど遊歩道がありその先に激流がある。今の時期は雨期で水量が多く、まるで爆発でも起こったかのような激しい水しぶきと轟音をとどろかせて流れる激流はちょっと恐怖感を覚える。遊歩道ほぼ水平の石畳の道で、道の斜面にはところどころでスミレやシソ科の花、イワタバコなどが見られたがほとんど名前がわからない花ばかりだった。
 虎跳峡を出発すると急に雨が降り出し雨足も次第に早くなってきた。道は急な登り道になりどんどん高度を上げ深い谷となる。山を登り切ると突然のどかな農村風景となりあたり一面に畑が広がり菜の花やジャガイモなどの花が咲いている。しばらく走るとやがて一面高山植物が咲き乱れる草原が現れる。ここは五花草甸というところで湿地帯のためかサクラソウやキンポウゲ、シオガマなどの大群落となっている。花の種類はあまり多くないが一面赤や黄色、白の色彩に覆われた様は素晴らしい。ここから30分ほどで今日の目的地シャングリラに到着する。
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朝の麗江 麗江の俯瞰
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虎跳峡へ向かう遊歩道 激流の虎跳峡
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五花草甸 五花草甸
   
6/26に見られた花
6/27 シャングリラ近郊の碧塔湖と属都湖
 やっと天気が回復し青空が現れた。予定を変更し午前中に近くの松賛林寺の見学と民家の見学をすることになった。シャングリラの市街を出て農村地帯を走りやや山間部に入ると前方にポタラ宮に似た大きな寺院が現れる。寺院は山の斜面に建てられているため下から見上げると巨大な城郭のようだ。帰りにこの寺院の好展望地で止まったので道のわきを少し歩くとハンショウズルに似たクレマチスがたくさん咲いている。そのほかにもアズマギクやアブラナ科、マメ科の花があったが畑地のためか花はあまり見られない。
 昼食後中国最大の国立公園といわれる普達措国立公園にある碧塔湖と属都湖へフラワーーウオッチングに出かけた。湖に沿ってつけられている遊歩道に入ると周りは湿地のためアヤメやリュウキンカやサクラソウ、スゲ科の花などが多くみられるが花の種類は少ない。
しばらく行くと次第に周りは樹林帯になり花の種類も急に多くなりサクラソウ、ユキザサやユリの仲間、アネモネの仲間、マツムシソウの仲間、ショウガ科やランなどもわずかだが見られる。
 碧塔湖のフラワーウオチングを終えバスで属都湖へむかう。途中の道路わきにはサクラソウやすみれ、インカルビレアなどの花が多く見られる。
 属都湖は遊覧船で対岸へ行くこともできるが湖に沿って遊歩道がある。こちらの遊歩道は森林帯が多く花はサクラソウばかりで途中の草地には大きなサクラソウの群落やキンポウゲの群落があったがバラやスイカズラ、ナナカマド、ツツジなどの花木が多い。湖の周りよりむしろ途中の道路わきの方が花は多いが、このあたりは四川省のように多くの種類が入り乱れて咲くというより特定の種類が小群落を作って咲いているので花の量は多いが種類は少ない。
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松賛林寺 シャングリラ市街方面の展望
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碧塔湖 碧塔湖から属都湖へ
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属都湖 属都湖の遊歩道
   
6/27に見られた花
6/28 シャングリラ郊外 碧沽天地
 今日は観光はなく終日フラワーウオッチング。シャングリラから4輪駆動車に分乗し道端に咲く花を見ながら標高3700mほどにある碧沽天地までいく。ホテルを出発した時はどんよりとした曇り空で天気が心配だったが走り出してしばらくするとみるみる天気は回復し晴天になった。
 シャングリラを出発し未舗装のがたがた道に入ると道の両側には花が多くみられるようになる。シャングリラの街を出てすぐアツモリソウの群落があるという場所で車は止まった。車を降りアツモリソウがあるという斜面に行くと残念ながらすでに花は終わっていた。株はかなりあるがどれもすべて花は終わっている。先月もここに来たという添乗員の話では今年は花の時期が早く先月にはもうブルーポピーが咲いていたという。ここにはアズマギクのほかマツムシソウの仲間、シオガマ、インカルビレア、トチナイソウ、ユリ、ショウガ科、それにわずかだがシャクナゲやリンドウも咲いていた。帰りにもう一度アツモリソウを探すということで先に向かった。
 標高が高くなるにつれ道の両側はサクラソウの大群落になる。道の両側は延々とサクラソウの群落が続きやがて広い草原で車は停車した。ここはサクラソウやアヤメの群落がきれいだが花の種類は少なく新しい花は見られなかった。さらに高度を上げると道の両側はアヤメの花が多くなり途中にはイエローポピーや黄色のシャクナゲ、ユキノシタ、クワガタソウ、ワスレナグサの仲間などが見られた。やがてサクラソウの群落が次第にワスレナグサに変わり斜面一面がブルーになると目的地の碧沽天地に到着する。
 牧草地で昼食を済ませた後湖の周辺へ花を探しに出かけた。すぐ近くには黄色のシャクナゲの木が数本あり、湖へ行く途中には巨大のリンドウ科の花、メガコドンがあった。この花は図鑑を見るまではナス科の花と思っていたが確かに葉はリンドウの葉と同じだ。湖の周りは一面ツツジでその間にクロユリの仲間やクロユリに似たキク科の花ががかなり見られる。この花を見たときクロユりとは葉が明らかに違うのでバイモの仲間かと思っていたが後で撮影した写真を図鑑で調べるとキク科の仲間であることがわかった。さらに写真をよく見ると皆同じだと思っていたがよく似た2種類の花で、他はクロユリの仲間であることがわかった。ツツジの林を端まで歩いたが他にはこれといった花は見られなかったので戻ってくると、林の縁に白いシャクナゲが咲いており、その近くにはサクラソウやイチゲ、キンポウゲらしき花がたくさん咲いていた。道の反対側には白いリンドウやイワヒゲ、アカバナ、カモメランに似た小さなランなどが咲いていた。
 帰りに朝見られなかったアツモリソウをもう一度ガイドが探しなんとか一輪花を見つけてくれた。町の近くの道端にアツモリソウがたくさん見られるのは日本では考えられないことだがいつまでもこういった場所を残してほしいものだ。
 夕食後はシャングリラの旧市街の散策に出かけた。麗江と同じように古い街の雰囲気残し町の中心には四方街といわれる広場がある。麗江のミニバンというところだろうか。広場では土地の人たちが踊る盆踊りの輪が幾重にもできみな楽しそうに踊っている。これを見ているとここが平和な楽園のように思える。輪は和につながるのだろうか。
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碧沽天地へ行く途中の花畑 碧沽天地
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周囲は一面のツツジ フラワーウオッチング風景
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シャングリラ旧市街 盆踊りの輪
   
6/28に見られた花
6/29 シャングリラから徳欽へ
 今日も朝はどんよりとした天気だったがホテルを出ると急速に天気は回復し真夏の暑さとなった。今日からシャングリラを後に徳欽へ移動し後半の山の旅が始まる。
 一昨日行く予定だったナッパ海を通るのでここでブルーポピーを見ていくことになった。ナッパ海は低地で雨期になると一面湖になるという。ブルーポピーは道路わきの傾斜地に咲いている。ここで見られるのはホリュドラに比べ背が高いく変種のようだ。色はやや薄い青色でほかに薄い赤紫も見られる。他にはアリウム、インカルビレア、シソ科、アブラナ科の花が見られたがそれほど多くはなかった。
 ナッパ海を後にさらに山奥へと進むと途中のスキー場の近くでは一輪アツモリソウや小型のユリや名前がわからないラン、タツナミソウの仲間と珍しいオレンジ色の芍薬の仲間の花などが見られた。ここを出発すると斜面に赤い花が点々と咲いてる。これはトチナイソウの仲間でサキシフラガ・ブレアナといいとても鮮やかな赤い色をした花だ。
 峠を越え次第に高度が下がると周りの草花や木々は次第に少なくなり代わってサボテンが多くみられるようになる。このあたりでは標高が高いところは雨や霧で草花や木が多いが、標高が低いところは乾燥地帯となりまるで西アジアのような光景になる。再び長い登り道になり、途中金沙江の大カーブを見学しなおも高度を上げるとやがて前方に白馬雪山が見えてくる。展望台の周りはツツジの多い草地が広がり斜面には百合の小群落があり、他にもナンバンギセルに似た赤紫色のユキノシタ科の花やラン、アリウム、シオガマ、シソ科の花など高山性の小型の花が見られた。
 標高4300mほどの峠を過ぎ一気に高度を下げると斜面にはサクラソウの群落が現れる。車をとめ斜面に行くと薄い空色のサクラソウの他にももう一種類のサクラソや色鮮やかな青色のケマンソウがみられた。そこから3~40分ほど行くと梅里雪山の展望地に着く。あいにく山頂は雲に覆われ見ることができなかったが13の峰があるという梅里雪山全体を見渡すことができる。
 徳欽の町を過ぎるとあたりは砂混じりの諸い地質になる。ちょうど近くの山で大きな崖くづれが発生し道路が一瞬にして埋まってしまった。雨が降ったらちょっと危ないところだ。そんな危険地帯を通過する間は緊張が続く。やっと危険地帯を通り過ぎると今日の宿に到着する。ホテルはまさに梅里雪山の展望台といってもよい場所にあり、真正面に梅里雪山がそびえ、部屋の窓からもその展望が楽しめる。
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次第に水位を増すナッパ海 ブルーポピーの咲く崖地
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金沙江の大カーブ 白馬雪山
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サクラソウの群落ガ続く はるか前方に梅里雪山
   
6/29に見られた花
6/30 徳欽の近郊
 朝起きて窓の外を見ると曇り空。期待した梅里雪山の山頂は見ることができなかった。朝食後メコン川の上流部の見学に出かけたが途中大きな崖くづれの跡があり心配したが無事通過。道はメコン川沿いの深い峡谷に沿って走る。天気は次第に回復し青空も出てきたが梅里雪山は相変わらず山頂部は雲に覆われている。峡谷以外に見るものもなく道路付近の花を探したが乾燥地のためごくわずかの花しか見られない。
 今日は梅里雪山を見るための調整日のような日でフラワーウオッチングの予定もなくメコン川の見学を終え徳欽の町の散策に出かけた。自由市場では野菜や果物などの食料品を売る小さな店がせまい通りをはさんでたくさん並んでいる。東南アジアでよく見る光景だ。徳欽の街はそれほど大きな町ではなく市内を歩いても特に見るものもない。
 昼食後は飛来寺の見学に向かった。飛来寺は小さな村にあるラマ教の寺院で規模もこじんまりとした寺だ。
最後はホテルのすぐそばにある公園へ行ったがそこではホテルの工事が始まっており、日中合同登山隊の碑も撤去されそうな運命だ。
 ホテルに戻り夕食まで時間があるので近くの森の小道の散策に出かけたが乾燥地のためか花は非常に少なく目新しい花は見られなかった。
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山頂は相変わらず雲の中 突然崩壊した道路
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危険な崖が続く メコン川上流部
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梅里雪山最大の氷河 日中合同登山隊の碑がある公園
   
6/30に見られた花
7/1 徳欽からシャングリラへ
 旅も今日が実質最後となった。朝梅里雪山が見られるのを期待したが残念ながらとうとう山頂を見ることはできなかった。ホテルを出発すると道路に砂の山があり通ることができない。すぐ横で建築中のホテルのコンクリートに使う砂を道路上ににおろしていった。全く考えられないことをするものだ。しかも作業員は一向に砂をどけようとせずぼっと立っているだけだ。現場監督らしき人が来て砂をどけ始めたがだらだらとした作業にいらだち、とうとうこちらのスタッフだけで砂をどかすことになった。やっと車が通ることができ徳欽から元来た道をシャングリラへ向け出発。
 シャングリラ近くの草原で車をとめフラわーウオッチングをした。山側の斜面では花が多く咲いていたがカワミドリに似た花以外はこれまでに見た花ばかりだった。道の反対が粟の樹林帯へ行ったがそこではオダマキやすでに花が終わったエンレイソウが多く見られたが目新しい花はなかった。
 ナッパ海が前方に見えてくるとシャングリラも近い。バスは細い道をナッパ海の入口へ入る。道の両側は菜の花やシオガマやキンポウゲの花が一面に咲いている。ナッパ海は広い草原で放牧地のためか花はほとんど見られないが近くの斜面にはブルーポピーが少し咲いている。背がかなり高いのは標高の低いせいだろうか。他にはカラマツソウ、トウダイグサ、インカルビレア、アスターやカワミドリに似た花などがあったが全体的にはトウダイグサやカラマツソウが多い。
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とうとう梅里雪山の全貌は現れず 道路をふさいだ砂利の移動作業
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広大なナッパ海 ナッパ海入り口付近の花畑
   
7/01に見られた花
7/2 帰国の前のアクシデント
 旅のしょっぱなは雨でこの先どうなる事かと心配だったが、その後は天気に恵まれ玉龍雪山や梅里雪山は見られなかったものの旅は順調に進み最後の日を迎えた。
 昨晩は激しい雷雨があり今朝も少し雨が降り続いている。早朝ホテルを出ると町は水浸し。空港近くでは増水した道を避けるため道路は大混乱。空港手前の道路は50センチほどの水位でパトーカも半分水に浸かり立ち往生。エンコして動かなくなった車を少しでも高い所に移動しようとして空港入り口の道をふさいでしまった。いったい何を考えているのだろうか。ドライバーやスタッフが大声で車をどかすように懸命に怒鳴るとやっと移動を始めたその間にバスの荷物室にも浸水しスーツケースは水浸し。中にあるカメラや電子機器もお釈迦になってしまった。空港に着くと滑走路も池のようになっており空港は閉鎖されてしまった。しかしフライトはキャンセルされず飛ぶか飛ばないかはわからないまま10時間以上足止めをくらってしまった。結局8時ころ広州までの飛行機が飛ぶことになり深夜広州までは移動できたものの日本へのフライトは当然間に合わず一日延期になってしまった。
 中国は建物やものはどんどん新しいものができ、いかにも近代化が進んでいるように見えるが都市基盤やシステムなど見えないところは置き去りにされ、ひとたび何かが起こるといろいろなところで問題が露呈する脆弱さの上に築かれた近代都市だ。
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一面水浸しの昆明市内 板のイカダで移動
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水没して動けなくなった車 一夜の雨で空港は夜まで閉鎖
   
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