大杉谷から大台ケ原
 
 

(2003.05.08〜05.11)
S. IWASA
  日本一の降雨量を誇る大台ケ原は一度は尋ねて見たいと思っていた所だった。中々機会が訪れないまま随分時が経ってしまったが、海外の情勢が騒がしく、気楽に海外の山へ行く気分にもなれないこの時期にと、一人で出掛けることにした。
幸い神戸の友人が山登りはしたくないが、大台ケ原なら車で行けるので、大台ケ原で落合いかえり道で寄り道して写真撮影を楽しもうという計画になった。
5月8日
  東京発の夜行バスで松阪まで行く事にする。夜行バスはそれほど安楽ではないが、東京から直行で行けるし、なにしろ安いのが魅力である。弁当を2食分とビールを買ってバスに乗り込む。バスはかなり混でいる。ビールを飲んで早めに寝る。
5月9日
   早朝高速を降りて市街地を走るころ目がさめる。空はどんより曇っている。JR松阪駅で降り、JRで三瀬谷まで行く、列車が来るまでの間に駅の待合室で朝食の弁当をとる。通学の高校生が大勢乗っているが、三瀬谷で一緒に降りる。ここから村営バスで登山口の大杉まで行く事になる。村営バスは村民と外来者では料金が3倍ほど違うが、こんな辺鄙な所を運行するにはやむを得ないのだろう。平凡な山村の道で眠くなる。やがて渓谷沿いの道で寒くなり目を覚ます。 間もなく大杉である。渡船場で係りの人に始発便まで時間があるし、ダムの修理で大巾に減水しているので、下船場は通常より3Kmほど下流になるので歩いた方が良いと奨める。約10Km2時間強だし、道はダムに沿ってごく緩やかな登りの歩き良い道だと言うことなので、気軽に歩き出した。道はまさにその通りだが、やはり10Km余計に歩くのは結果的には後で応えた。


減水した宮川ダム


六十尋滝


千尋の滝
  山道にかかる直前で大きな滝に出会う。六十尋の滝と言うのだが中々見事なもの、しかし、後になって見るとまるで子供のような滝であった。渓谷に沿って山道を歩く、周りの木々が住み慣れた北関東とは大いに違い緑濃い広葉樹が多く、なんとなく豊かな感じがする。
  桃の木山の家までは標高差は約200m渓谷に沿った道には手摺や鎖があり釣り橋も沢山ある。時に川原に下りる所があるが道はしっかりしていて歩き良い。水量豊かな滝は落差も大きく見事であり、渓谷の水は澄んで美しい。水の美しい京良谷出会いを過ぎると少し登りがきつくなるが、楽しいプロムナードと言った感じである。やがて大杉谷最大の落差135mを誇る千尋滝が現れる。なんとも不思議な滝で尾根の天辺から流れ落ちているように見える。次はシシ淵、たんたんと水を湛えた静かな淵は吸い込まれそうな雰囲気がある。平等嵒の裾を廻りこむと間もなく桃の木山の家である。
  今夜の宿桃の木山の家は釣り橋を渡った対岸に立派な建物がある。4時半到着。シーズンオフなので客は少なく下り客2組5人、登り客は単独の自分のほか1組2人の総勢8人。2百人ほど泊まれると言うから大きな広間に勝手に場所を取る。夕食前にゆっくり風呂に入れる。
  夕食は暖かい海老フライと豚カツ、味噌汁にご飯、標高は高くないのでご飯は美味しく炊けている。谷間だから日が落ちるのは早いうえ、ずっと曇り空だったのでじきに暗くなる。夕食後は食堂で酒を1杯飲んで早めに寝る。


シシ淵


桃の木山の家
5月10日
  6時起床。雲多くスッキリしない、天気は昨日より少し悪くなりそう。7時出発、程なく七っ釜の滝へ、下の3段だけしか見られないがこの滝も良い滝だ。次の光滝は見る角度が余り良くない。最後を飾るのは堂倉滝、滝壷をダムにして発電所が出来ているほど水量が多く、落差はそれほどではないが堂々たる姿で大杉谷中随一の滝と言って良いと思う。雨が少し降ってきた。雨具を着ると暑いので、折りたたみ傘を開く。 ここで滝は終わり少し高度を上げると林道と交わる。林道の右脇の平地に粟谷小屋の屋根が見え、ここまで車で入ることが出来るようである。粟谷小屋を右に見て左へ入ると堂倉避難小屋がある。雨を避けて軒下で早目の昼食。ここからは日出ヶ岳に向かって尾根筋を登るようになる。しばらくして下山の人達に出会う。今日は土曜日なので早朝日出ヶ岳までバスで来て大杉谷を下る人が多いようである。



七っ釜滝


光滝


堂倉滝

  ところどころで急な登りがあるが、傘を差して歩けるような道で楽に歩くことが出来る。シャクナゲ坂は見事と言うほどの石楠花はなく、花も少し遅い所為もあるがチラホラ、やはり石楠花は中部山岳以北が適していると言えよう。やがて日出ヶ岳へ到着、風が強く展望台の下で一息入れる。小雨と濃いガスのため展望は全くないが、一応展望台に登る。何のために登るのか本人にも分からない。少しでも高い所があれば登りたくなるのは本能か、習性か。登ってしまえば外にすることはなく、今夜の泊まりの大台荘がある駐車場へ下る。
午後1時を少し過ぎていた。ここまで昨日から後になり先になりして来た大阪のオバちゃん2人は今日のバスで下ると言うので、レストハウスに入りビールで登頂成功の乾杯をする。全く偶然にも車で登って来た神戸の友人とも出会う。オバちゃん達はバスを上手くつかまえて早々に下って行った。  大台荘に早めにチェックイン、こんな天気を予想してか早めに風呂に入れたのは有り難かったが、外は相変わらず雨と霧、夕食まで何となく無為に過ごす。ここの夕食も豚カツだが昨日の夕食の方が良かったように思う。夕食後は酒を飲んで早めに寝る。
5月11日
   昨日からの雨と霧は相変わらずで、とても写真どころではない。相談の結果、早々に山を下りて室生寺へ行く事にする。室生寺は昔一度行ったことがあるが、台風で破損した五重の塔も修復されたとの事。雨に濡れてしっとりとした室生寺は良かった。五重の塔の周りの杉林はだいぶ間引きされ少し明るくなり過ぎたように思うが、落ち着いていて何処か柔らかな雰囲気は昔の侭のようであった。


室生寺新緑


室生寺石楠花
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