スイスアルプス、二つの4000m峰登頂とアレッチ氷河を歩く (92.7.24〜8.2)

 

チューリッヒ空港からバスで最初の目的地グリンデルワルトへ向かう。バスの窓からながめるスイスの印象は大変のどかで美しい。村むらには必ず教会の塔があり、その周りに民家が集まり、それを囲むように牧草や小麦、とうもろこしなどの畑が広がる。
スイスは観光の国だけあってどこに行ってもきれいだ。工場も日本のように機能一点張りの醜い建物はほとんどない。空き地や建物の影にも見苦しいものはまったくみあたらない。観光地という言葉はスイスには必要ないような、どこをとっても美しい国だ。

 



スイスの田園風景

 


インターラーケン

山間部に入るとしだいにスイスらしい景観となる。山の高度も徐々に増し、山肌も緑から岩へ、そして雪を頂いた険しい山岳風景へと変わる。 ベルナーオーバーラントの入口インターラーケンに近づくと、周りは一層観光地らしくなり風景も一段と美しく、山々の迫力も増してくる。インターラーケンは二つの湖の間にある観光都市であり、ここに滞在し、のんびり過ごしたり、ここから日帰りであちこちの観光地を訪れたりする人が多い。
インターラーケンを過ぎると急に山間部に入り、谷の間を通り高度をぐんぐん増すとやがてグリンデルワルトの村に到着する。村はのどかな山間の牧草地にホテルやロッジが点在し、メインストリートには土産物店やホテルが立ち並び、どの建物も色とりどりの花で飾られており大変美しい村だ。

 


グリンデルワルト

 

アレッチ氷河

登山電車に乗り、いよいよユングフラウヨッホへ向かう。緑の牧草地をぬけ次第にアイガーに近づくにつれ岩壁が一層迫力を増して迫ってくる。やがてメンヒの氷河の横を通り電車はアイガーの下をくりぬいたトンネルに入る。途中電車はアイガーバンドとアイスメールに停車し、アイガーの岩壁に開けられた窓から切り立った岩壁を望むことができる。終点のユングフラウヨッホ駅はアイガーを抜けた地下にあり、そこから少し歩くと展望台に出る。
展望台からは、眼下にヨーロッパアルプス最大のアレッチ氷河がはるか彼方まで延びている。明日はこの氷河の上を歩き途中のコンコルデアヒュッテを目指す。

ユングフラウヨッホ駅を後にし、白銀の中を今日の宿泊先、メンヒヨッホ小屋を目指す。緩やかな傾斜の道をおよそ1時間程歩くと標高3629mにあるメンヒヨッホ小屋に到着する。ここはメンヒ、ユングフラウ、アイガー、シュレックホルン、フィッシャーホルンなどの登山基地であり多くのクライマーが集まるところだ。
山小屋といっても寝るだけの日本の山小屋のイメージとはかなり違う。山小屋の設備はよく、特に食事は山小屋とは思えないメニューだ。食事が終わってもワイングラスを片手に夜遅くまで談笑が続く。

 

メンヒヨッホ小屋

 



アレッチ氷河くだりの出発

簡単な昼食を済ませたあと、グリンデルワルトからきたガイドとともに長大なアレッチ氷河歩きが始まる。ガイドが先頭にたち、我々はガイドとザイルで結ばれ一列になって氷河を歩く。これはクレバスに落ちたときのための安全対策である。初めてアンザイレンして歩くため、ザイルに気を取られ歩き辛いが次第にペースが合い景色を見る余裕もでてくる。
氷河といっても出発地点は完全に雪で覆われており、まるで広大な雪山を下っているような感じだ。1〜2時間ほど歩くと雪も少なくなり所どころ氷が表れ深く切れこんだクレバスを渡るようになる。
崖の上にポツンと建つコンコルディアヒュッテが見えてくる。どうやってあの小屋へ行くのか不安になるような位置に建っている。小屋に近づくと岩壁に立派な階段が付けられている。良くこんな岩壁に付けたものだと感心する。階段の取っ付きだけは氷河に流されてもいいように垂直な木の梯子が取りつけられているが、後は鉄のしっかりした階段が小屋まで続いている。

 

コンコルディアヒュッテは白い山の右の岸壁にある

 

クレバス

早朝6時ころ小屋を出発し再び長い階段を降り氷河に出る。昨日とはうって変わって今日は最初から氷の上を歩く。次々とクレバスが現れるが幅は1m位で簡単に飛び越すことができる。しかし、所どころ深いクレバスがあり緊張する。氷の厚さはこのあたりで900mだという。クレバスの中は青白い神秘的な光を放って氷の壁が奥深くまで続く。
やがて単調な氷とクレバスの連続から一転して巨大な氷に取り囲まれた不思議な世界に入り込む。これまでの平坦な氷原から、起伏の多いまるで恐竜の背中のような風景に変わり、氷の山を歩くようになる。すでに氷の表面は解けだしており、緊張しながら起伏のある氷の上を進む。

 


キューボーデンへ向かう道

ここを過ぎると氷河歩きもいよいよ終りだ。まだ氷河その物は続くが中間地点で氷河歩きは終わり地面に上がる。急な岩場の斜面を登りきるとそこからは平担なハイキング道になり、これまでの氷と岩と雪の風景から高山植物が咲く緑と水の世界に変わる。辺りに咲く高山植物は日本では見ることのできない珍しい花もあり、有名なアルペンローゼも所どころで目にすることができる。
キューボーデンからロープウエーでフィッシュへ下り、ここから列車でブリークまで向かう。ブリークで2日間同行してくれたガイドのハンスさんとも分かれ、我々はバスで次の目的地、山間の村ザースフェーへ向かう。
ザースフェーはまだ日本人には馴染みのないところだが、4000mクラスの山に囲まれ、迫力ある氷河と岩壁が間近に望める大変素晴らしい所である。

 

ザースフェーのロープウエーを降りた景色

 

アラリンホルン (4027m)

早朝ロープウエーでおよそ3500mまで一気に上がるとそこは一面の銀世界だ。この辺りは夏でも豊富な雪があり、広大なスキーゲレンデが広がり、世界各国のナショナルチームが練習をしており、ゲレンデを横切っていくと猛スピードで側をかすめていく。
ここから4027mのアラリンホルンを目指す。 標高差5〜600mの比較的急な斜面を2時間位登るとアラリンホルン頂上に到達する。途中、アルプス最古のガイドと遭遇することができた。今年92歳でいまだに現役のガイドとして活躍しており、昨年91歳でマッターホルンに登り、既にマッターホルンへの登頂回数が300回を越えるという驚くべき経歴の持主である。

アラリンホルン頂上に立つとまず目に入るのは芸術的なまでに美しく聳えるマッターホルンの姿だ。まわりの山も日本の山にくらべれば遥かに険しく迫力が有るが、マッターホルンはその中に有って一層迫力と美しさを誇って聳えている。
バリスアルプスはヨーロッパアルプスの中で最も高山が集中している山群で、ヨーロッパアルプス第2位の高峰モンテローザを初めとして4000m以上の山が無数に有り、頂上からその迫力を思う存分堪能することができる。

 

アラリンホルン山頂

 

ツェルマット

下山後は再びバスで次の目的地ツエルマットへ向かう。ツエルマットへはバスで直接入ることが出来ないので一つ手前のティシュまで行き、そこで列車に乗換えツエルマットに入る。
ツエルマットの町は環境に配慮された町で、建物はスイスの観光地特有の調和の取れた建物が立ち並び、どの建物の窓もきれいな花で飾られており大変美しい。町の中の交通機関は電気自動車と馬車だけで排気ガスを出すような乗り物は一切ない。町へ入るのも電車だけで車で来ることはできない。その為バスや車の場合はツエルマットの一つ手前のティッシュで電車に乗りツエルマットに入る。たまたま工事現場で火災が発生したが、驚いたことに消防士がホースを担いで走ってきた。消防車といえども排気ガスを出すものは一切ないのであろうか。
早朝ロープウエーで約3500mのクラインマッターホルンまで一気に上がり、そこから標高4160mのブライトホルンの頂上を目指す。
クラインマッターホルンでロープウエーを降りトンネルを抜けると広大なスキーゲレンデが広がる。ここから今日のガイドのアディーさんとまたアンザイレンしてブライトホルン頂上を目指す。
1時間程歩くとブライトホルンの取っ付きに掛かり、ここから先は傾斜もきつくなるのでアイゼンを履く。およそ1時間で頂上に到着する。頂上は生憎ガスが多く、モンブラン方面は見ることができなかったが反対側はよく晴れ渡り4000mクラスの岩山が連続する。

 

ブライトホルン

 

モンテローザ (4634m)

今日は自由行動日。一人でツエルマットからゴルナー鉄道に乗り終点のゴルナーグラードへ行く。ツエルマットの駅を出発すると、窓からマッターホルンの姿が徐々に表れ均整の取れた美しい姿を見せてくれる。途中のリュッフェルアルプ辺りから見るマッターホルンが一番美しいという。途中幾つかの駅に停車しながら終点のゴルナーグラードに到着すると既に標高3130m。真っ正面にはアルプス第二の高峰モンテローザが聳え、その右にはリスカム、更にその右には昨日登ったブライトホルンが純白に輝き、それぞれの山からは氷河が延び美しい幾何学模様を描いている。
ローテンボーデンの駅を降り斜面を下ると マッターホルンの姿を映した美しいたたずまいのリュッフェルゼーにでる。
池の周りには高山植物が多く咲き、珍しい種類の花を見ることもできる。特に濃い青い色のゲンチアナの花が目を引く。ここから途中のリュッフェルアルプまでのんびりと雄大なアルプスの山々を見ながら高山植物の咲き乱れる草原を歩く。

 

マッターホルンを映したリュッフェルゼー

 

一面の高山植物

リュッフェルゼーの池を過ぎると広々とした草原が広がり、4000m以上の山々を背景にして色とりどりの高山植物が咲き誇っている。マッターホルンの長く延びる稜線と鋭角的にそそり立つ岩壁、白く輝くモンテローザ、周囲にそそり立つ4000m以上の高峰、素晴らしい景色に圧倒される。
リュッフェルベルクまでは広い台地になっているが、そこから先は急な下りになり、斜面につけられたつづらおれの道を一気に下る。下り着くとそこはリュフェルアルプになる。ここからは最も均整の取れたマッターホルンの姿を見ることができる。ホテルのレストランから食事でもしながらのんびり眺めるには最適な場所だ。

 

マッターホルン (4478m)

山と花のアルバム  
戻る