北海道・雨竜沼湿原

(2004/07/26)

雨竜沼は北海道の北西部増毛山地の暑寒別岳のふもと、標高850mほどに広がる高層湿原でおよそ200万年前の火山活動により生まれたという。広さは東西2キロ、南北1キロにわたる広大な湿原で中には大小の池塘が点在し、多くの山野草や珍しい山野草などを見ることができる。 それでは美しい山野草を求めて雨竜沼へ出発しよう。
登山口の南暑寒荘までは公共交通機関が無いので自家用車利用になる。雨竜町から林道をおよそ1時間で駐車場に到着する。駐車場のすぐ近くに管理小屋があるのでここで入山届けをして林道へ入る。

林道の両側は原生林に覆われ、道の両側にも比較的大型のエゾニュウやウバユリ,ヤマブキショウマなど多くの花が咲いている。
林道を10分ほど歩くと最初のつり橋に出る。このつり橋を渡ると登山道となり緩やかなのぼり道になる。

登山道はペンケペタン川に沿って樹林帯の中を歩く。ここにもサンカヨウやヨツバムグラなど多くの山野草が見られる。
谷沿いの登山道を20分ほど歩くと右手に落差36mの白竜の滝が現れる。登山道は滝の手前で二手に分かれるので右の道を進むと滝の正面の展望台に出る。
滝見物を終えたら急坂を登り登山道に合流する。ここにはベンチがあるので一息つくには好都合だ。この周りにはエゾアジサイの花が多く、比較的な地味な色が多い山野草の中ではエゾアジサイの鮮やかなブルーはひときわは目を引く。
ベンチから道はややくだり気味になりすぐ第二つり橋に出る。このつり橋をわたると登山道は急傾斜になり道の両側にはヨツバヒヨドリの花が多く見られるようになる。急斜面を登るにつれしだいに周囲の木々もダケカンバなどの高山性に変わり傾斜もしだいに緩やかになる。

やがてペンケペタン川の川原に出ると道の右手に清水が現れる。この水はとても冷たく急斜面で大汗をかいた体を一気に冷やしてくれる。

元気が出たところで先に進むとあたりは熊笹の草原になり木はまばらとなる。もうこのあたりまで来ると湿原の入り口も近い。次第に道は平坦になり道の両側にはシロニガナやアキノキリンソウなどの花が咲き、やがて前方に南暑寒岳が現れる。

出発して1時間半ほどで湿原に到着する。湿原の入り口の洗い場で外部から種を持ち込まないよう汚れた靴を洗い湿原に入る。ここからは木道となり木道の両側にはアザミやギボシなどの背丈の高い花が多く見られ、少し歩くと立派なテラスが現れる。このテラスからは湿原全体を見渡すことができる。雨竜沼は比較的起伏が多く湿地帯や、沼、台地などが混在し変化にとんでいる。ただの木道以外は歩くことができないので全体を観察することはできない。 雨竜沼のガイドブックなどにはエゾゼンテイカ(エゾカンゾウ)の群落の写真が紹介されているが、実際には残念ながら群落は見られない。これは数年前に遅霜の被害にあいまだ回復していないためだ。そのため湿原全体は緑に覆われ遠目には花が少ないように見えるが実際には多くの山野草が見られる。
テラスからさらに先に進むと木道は二手に分かれる。どちらをとっても湿原を一周して同じところに戻ることができる。
左手の道を進むと点在する地塘にはエゾヒツジグサやオゼコウホネなどの水生植物が見られる。エゾヒツジグサは尾瀬沼などで見るヒツジグサと少し違い中心部黒味を帯びている。北海道ではオゼコウホネとネムロコウホネが見られるがここで見られるのはオゼコウホネのほうだ。両者の違いはオゼコウホネは花の先端中央部が赤いのに対しネムロコウホネは全体が黄色だ。
木道を進むにつれ植生も次第に変わりテラス付近ではヒオウギアヤメが多く見られたが次第に湿地が乾燥し、エゾクガイソウやエゾノサワアザミ、エゾリンドウ、シオガマギク、エゾノシモツケソウなど山地でも見られる花が多くなる。なかでもエゾノシモツケソウの赤紫色は一面の緑を華やかにしてくれる。
分岐からしばらくするとエゾクガイソウとエゾノサワアザミの群落が現れる。一面の花畑の中を歩いていると別世界にいるような気分になる。
クロバナハンショウズルは希少種で本州では見ることが無いので楽しみにしていたが幸い湿原のいたるところで見ることができた。この花は最初黒褐色の毛におおわれ、それがはがれ落ちると光沢のある暗紫色の花ビラが現れる。そして花が終わるとチングルマのように長い毛に覆われる。
木道も半周を過ぎるともう一方の道と合流する。ここで左に進むとさらに湿原が続きやがて南暑寒岳への登山道へと続く。ここから右側にすすむと元の場所に戻る。合流点のあたりではところどころでピンクの小さな花を見かける。ラン科のトキソウで尾瀬でもよく見かける花でこれも絶滅危惧種に指定されている。
1時間ほど花や景色を見ながらのんびりと歩くとやがて前方にテラスが見えてくる。雨竜沼はこの木道以外には散策できる道は無くこれで雨竜沼を後にして元来た道を下り出発地の駐車場まで戻る。

雨竜沼登山道から湿原で見られる花はここをクリックしてください

戻る

山と花のアルバム